小説(521文字) 大佐の恋

男は薬局に入った。店内で女性と目が合った。恋に落ちた。男は外で待っていた。連絡先を渡した。男は去った。女性は連絡先を見つめた。二人は恋に落ちた。BMのオープンカーでデートした。部屋で缶ビールを飲んだ。男は戦争に向かった。男は日本軍最強の忍者部隊隊長、大佐だった。男は立っている。仲間達は刀を天に掲げ叫んだ。台湾防衛戦線だった。男は敵軍特殊部隊にたった独り斬り込んだ。男は負傷した女性をかばって戦った。敵を壊滅させた。男は力尽きた。女性は男の胸で泣いた。恋人は男に電話した。男の腕の送信機に恋人の名前が表示された。我ら皇国のため血肉をさらさん。そこへ恋人のマンションに忍者部隊の隊員二人が訪れた。男達は哀しい眼をしていた。恋人はすべてを悟りスマホを落とした。テレビで大佐の戦死を報道していた。女子アナは原稿を投げ捨て泣き叫んだ。ある男が駅のホームで自殺しようとしていた。大佐の霊は男の襟をつかみ引っ張った。次の日男はあの恋人と駅のホームで目が合った。恋人は哀しい目をしていた。恋人は駅のホームに飛び込んだ。大佐は男を押した。男はホームに飛び降りた。恋人をかかえ隙間に入った。男は恋人を抱きしめた。列車が背中をかすめた。大佐は皆の中を独り歩いた。